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 スプリントのストライド動作:分析と評価(要約)
 

 

Sprinting Stride Actions: Analysis and Evaluation

Don Chu, PhD., CSCS
Remi Korchemny, PhD,
Ather Sports Injury Clinic, Castro Valley, California


スプリントはバリスティックな周期的動作であり、ランニングストライドがメイン動作である。筋は、一歩ごとに活発な収縮、弛緩、伸長を繰り返し、その筋が付着している身体セグメントを加速、減速させる。バリスティックな筋の活動における、実際の運動神経の発火時間は極めて短い。動作のほとんどが、慣性の適切な利用、予備伸長された括抗筋に蓄えられたエネルギー、および筋の弾性要素によって生じる。またストライド時には、伸張性、短縮性、および等尺性と、異なる筋活動様式が非常に早く繰り返されている。例えば、支持局面で足関節のトルクを発揮するときには、脚の筋はコンセントリックに活動する。しかし、接地の直前には、同じ筋がアイソメトリックに活動して膝と足関節をロックする。最後に、ブレーキ、償却局面では、同じ筋が重力に抵抗してエキセントリックに活動する。

ストライド動作において、筋は収縮、伸長、筋長の変化を伴わない張力発揮、および弛緩といった、すべての特性を発揮する。 ストライド動作における筋収縮は、括抗筋の力と、慣性によって進行方向の反対側に移動しようとするセグメントの質量との、両方に抵抗する。研究によると、ストライド動作の間、筋は発生したエネルギーの約57%をセグメントの加速に、22%をセグメントの減速に利用する。重力に抵抗する仕事に3%、空気抵抗や摩擦に対して残りの18%が利用される。さらに、筋収縮は、次の4つの力によって補助される。

  1. 活動する筋の弾性が、その筋が元に戻る補助をする。股関節伸展の間、殿筋は、地面反力の慣性によって圧縮された状態になる。脚が空中で最大伸展位に達したとき、圧縮された筋は脚を巻き戻し、前方へのスイングを助ける。 股関節の屈曲の間、大腿四頭筋(特に大腿直筋)は膝を上へと動かす慣性によって圧縮された状態になる。変形からの反発により、これらの筋は脚を加速して、接地に向けて補助をする
  2. 予備伸長される筋群は大きく伸長されるため、ポテンシャルエネルギーを蓄える。このエネルギーは、バリスティックな伸長の力が粘性抵抗と重力と釣り合うと、すぐに解放される
  3. 動作中のセグメント長を調節することで、角速度は増減する。重心と軸との間の距離(半径)の変化は、振り子の角速度を変化させる。脚を振り子と仮定すると、脚を折りたたむことで、脚の重心が股関節より前方へ移り(半径が減少する)、スイングする脚の振幅を最大にする条件が達成される
  4. セグメントが円軌道を通ることで、活動は補助される。脚の前後への移動に対して、足は円軌道でついていく

 

ストライド動作の分析

一周期のストライド動作を分析することで、スプリントの全周期を考察できる。考察する範囲は、各セグメントの動作だけではなく、身体全体の特性と活動の順番も含まれる。分割した動作と、動作全体について研究するべきである。動作分析でカギとなるポジションを発見することで、スプリントスキル向上のために、どの筋を改善するべきか選択できる。また筋電図によって、筋活動の性質と特性を、より深く理解できるだろう。

ランニングストライドには、支持局面と滞空局面の2つの主要な局面がある。支持局面は、ブレーキング局面、償却局面、および推進局面からなる。滞空局面は、上昇局面と下降局面からなる。

図1. 着地直前の姿勢(支持局面初期)

支持局面

支持局面は、接地から始まり、そこでブレーキングが起こる。脚が地面に近づいていくと(図1)、膝の伸筋(大腿四頭筋)と屈筋(ハムストリング)は、膝をわずかに屈曲した状態(約170°)で固定する。足関節の背屈筋群は、足底屈筋群とともに足関節を安定させ、足関節は少し下向きになり、地面へ向かう(約110°足底屈)。効率よい接地のために、接地時のつま先と身体重心の間の水平距離はおよそ38〜48cmでなければならない。接地時の膝の角度は170°より伸ばす必要はない。水平線に対するつま先と股関節のアライメントの角度は、60〜70°(上体の傾きの角度)程度にする。

図2. 支持局面中期

前方への脚のスイングを減速するために、股関節伸筋と膝の屈筋は、エキセントリックに活動する。その後、膝の伸筋と共にアイソメトリックに活動して膝関節を固定し、カタパルトアクション(投石器動作)によって、足関節の早い角速度を身体重心へと伝えることのできる固いレバーを形成する。ヒンジモーメントに対する角速度は、80°/秒から0.09秒に75°(エリートスプリンターの場合)まで変化する。接地により、脚は地面からの着地衝撃を受け、重力に抵抗して仕事をする(図2)。股関節と膝には屈曲させる力が、足関節には背屈させる力がかかる。この局面で、股関節および膝の伸筋と足底屈筋は、重力に負けて強く引き伸ばされ、エキセントリックに活動する。これによって、弾性エネルギーが貯蔵され、次の動作に利用することができる。

股関節、膝、および足関節の筋が強いほど、償却局面でスプリンターが過度に下へ沈むことを防ぐことができる。これにより、スプリンターが重心を素早く上昇させることが可能になる。重心の軌跡の振幅における最下点は、接地局面と償却局面との間で、低く沈み過ぎてはならない。股関節と膝の屈曲は、それぞれ140〜150°、145〜155°程度にする。

Ralph Mannのバイオメカニクス的な分析によると、エリートスプリンターは、水平方向の速度が速くなるに連れて、大きな垂直方向の力積を発揮する。エリートスプリンターは、短い時間に、より大きな垂直の力を出さなければならない(0.09秒に約156kg)ため、強い筋力が必要である。

100mを10秒2で走るスプリンターの場合、股関節伸筋で体重の3倍、股関節屈筋で1.2倍、膝関節伸筋で2.1倍、足底屈筋群で3倍、そして体幹の伸筋で2.7倍の力を発揮しなければならない。これに加え、動作中のセグメントを減速、停止するために、非常に強いエキセントリック筋活動が必要になる。米国エリート男子ジュニアスプリンターの筋力測定では、膝伸展のエキセントリック筋力のピークトルクは約650±70N、膝屈曲のエキセントリック筋力のピークトルクは約1000±200Nであり、膝伸展との割合は、約1:1.15であった。また、スタンディングジャンプで約3m跳べることと、体重の50%のウェイトでのパラレルスクワットを5レップ、5秒以内でできることが瞬発力の指標となる。

図3. テイクオフ直前の姿勢

身体重心が支持面を通過するとすぐに、脚の筋活動はエキセントリックからコンセントリックヘと変換する 。このポイントから、筋は、前方へ移動している重心を鉛直方向に加速する。支持局面の最後は推進動作であり、ここでの地面反力が身体を水平方向に加速する(図3)。

テイクオフ動作の間、選手は能動的に足関節を底屈させる。足関節の伸展/屈曲動作は、35〜38°の範囲で行う。また、股関節と膝関節は伸展を続け、膝が完全に伸展する前に(膝関節は約170°)、足が地面から離れる。これによって、重心を小さい角度(2〜3°)で空中へ投げ出し、軌跡の高さを抑えることができる。この動作は、後方へのキックとスイング動作のスピードを増加させる。地面を離れた後は、能動的に着地の準備をする。

図4.  滞空局面

 

滞空局面の前半は、ストライド軌跡における最高点に重心が達する時点までであり、後半は、最高点から重心が下降して足が接地するまでである。テイクオフ後、支持脚は後方へ移動して最大伸展の状態に達し、前方にスイングした脚は、最適な屈曲位まで移動する(地面反力の慣性と、スイングの前方への運動量によって)。

その後、後ろ脚は折りたたまれ、接地へと向かう前脚の方向へ移動し始める。脚を、効率よく速く回転させるために、償却局面全体を通して、脚を折りたたんだ状態を保つ(膝の角度は約30°)。これらの動作は、支持局面における圧縮、解放の力を増大させる(図4)。

図5. スイングレッグの前方および上方への動作

滞空局面

スイングしている脚が前後に動くとき、その運動量は支持脚にかかる力を増大させる(図5)。支持脚が垂直面を通過するとき、スイングしている脚は前方および上方へと動き始める。そのバリスティックな運動量は、重心の前方への加速を補助する。これらの動作をコントロールするために、償却局面の間、折りたたんだスイング脚の足部を円軌道で移動させ、支持脚の膝と同じ高さまで引き上げる。

運動の第一法則によると、身体は、力が相互に作用した結果として移動する。ランニングにおける主な力は、重力、環境的な外力(空気抵抗、摩擦など)、および地面反力に対抗するための仕事として発揮される。スプリントでは、これらの力によって筋が大きく伸張される。スピードが上がるにつれて、外力と重力が身体スピードに及ぼす影響が大きくなる。例えば、5m/秒から11m/秒までスピードを上げた場合、身体の大きさにもよるが、身体にかかる抵抗力は約4〜5倍になる。重力は、水平移動のスピードではなく、スプリント動作における力の方向に影響を及ぼす。支持局面における垂直方向の動きの振幅があまりにも大きい場合(6cm以上)、支持局面の時間が延長し、空中軌跡の距経が減少する。支持局面の時間の延長によって、脚の切り返しのスピードが減少し、最終的にストライド長が減少してしまう。

パフォーマンスを完成させる

活動筋のパフォーマンスを最大にするためには、筋収縮について理解する必要がある。動員される運動単位の数によって、利用されるエネルギー量が決定する。筋収縮のスピードは非常に速く、その特性は非常に多様であるため、人間は自分の筋活動をすべてコントロールすることはできない。ストライド動作をすべて計算するためには、非常に大きな容量のコンピュータを用いなければならないだろう。しかし、選手はパフォーマンスを完成するために、自分の動作と力について研究するべきである。

研究によって、ストライド動作に動員される下肢の筋群は、ストライドサイクル全体の30〜80%の間、張力を維持している可能性があることが示されている。例えば、下肢の筋群が最も高い活動性を示すのは、着地の準備時である。このとき、股関節と膝の伸筋、および足底屈筋が、脚全体を1本の固いレバーとして固定させるために、括抗筋と共収縮する。これにより、しっかりと着地することができ、着地時における重心の軌道の高さを保つことが可能になる。

筋電図(EMG)による研究から、下肢の筋群は着地直前と償却局面において、最も強い張力を発揮することが示されている。その後、EMGは推進過程が終了するにともない減少し始める。支持脚が地面から離れた後、これらの筋は、再びスイング動作に関わる状態になるまで短い瞬間リラックスする。このように、殿筋とハムストリングはストライドサイクル全体の80%の仕事に関与し、大腿四頭筋は75%の仕事に関与する。表1に、ストライド動作に関わる筋を示す。

図6. スプリントに関与する上半身の筋

また、肩と腕の筋を強化することで、腕の動きによって重心が垂直および水平方向にぶれることを防ぐ。上半身の筋は、慣性モーメントの増減を補助し、適切な身体バランスとコーディネーションをもたらす(図6)。

肩、腕の強化には、上腕、肩、および後背部の筋(胸筋、広背筋、上腕二頭筋、上腕三頭筋、三角筋)が含まれる。この部分の筋力を向上することで、よりリラックスした状態で走ることが可能になる。

表1.ストライド動作に関与する下肢の筋

筋の名称
筋による身体動作
殿筋群(大殿筋、中殿筋、小殿筋) 股関節をコントロールして、上半身と大腿を伸展する
ハムストリングス
(半腱様筋、半膜様筋、大腿二頭筋)
股関節を伸展し、膝を屈曲する。膝の屈曲には、膝窩筋と腓腹筋も関与する
股関節屈筋群(腸腰筋、大腿直筋) 股関節を屈曲する。大腿筋膜張筋、恥骨筋、および薄筋によって補助される
大腿四頭筋
(大腿直筋、内側広筋、外側広筋、中間広筋)
膝を伸展する
下腿三頭筋(腓腹筋、ヒラメ筋)
後脛骨筋
足底屈筋群
足関節の固足し、足底屈する
前脛骨筋、長母指伸筋 足関節を固定する
足底の筋 下腿の筋と結合して4つの層を形成し、足底を安定させる。強い足底筋は、着地時の足関節を安定させる

 



   
 
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